窯主エッセイ 天目に挑む作家たち (青木龍山寄稿)
天目に挑む作家たち (青木龍山寄稿) PDF 印刷 Eメール
作者: 青木 清高   
2012年 11月 26日(月曜日) 19:49
写真:故・青木龍山 アトリエにて

日本磁器発祥の地有田に生まれて、その代名詞である染付け染錦、赤絵、白磁などの磁器作品を私なり取り組んできた。しかし伝統的な造形美を追求してゆくだけの仕事に、自己表現の可能性を広げてゆくことができないと感じ、そこですべての有彩色を省いて残った黒一色の表現がかえって幅があるだろうと考えるようになった。また漆黒の色のもつどっしりとした重量感は自分の持っている体質にもあっているようにも思え、「よし、それならば黒というひとつの色のみでフォルムを極めよう、白磁の街有田で、ひとりぐらい、黒い焼き物を焼く人間がいてもいいではないか。」

そんな考えに至ったのである。黒のもつ幽玄さ、深くて渋い力強さ、そして粋・・・

気がついたときにはどんどん黒の魅力にのめり込んでいった。

私の場合、かたちは生活の周辺、特に自然界からのヒントが大切な意味をもっている。

創作のスタートから心がけていることは、そこにどれだけの感動や詩情を豊かに盛り込んだ表現が出来ているか、そしてそれは人々に、単純明快、シャープかつストレートに伝わるものでなくてはならないと考えている。借り物の造形ではなく、また過去の再現でもなく、自分なりの自分の天目の表現にこだわっている。現在は黒天目釉の上に象嵌技法や刷毛目をつかって、銀砂や瑠璃で彩色したり、金銀プラチナなどで焼き付けることなど歳をとってゆくにつれて、日々、天目の可能性に挑戦することが楽しい日々である。

ミステリアス天目、炎芸術No.81のための未校正の原稿。2005年

最終更新 2012年 11月 26日(月曜日) 19:55
 

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